ついに、新しいプリキュアが始まりましたね!
今年(2018年)のタイトルは『HUG(ハグ)っと!プリキュア』。
正直なところ、最初は「はぁ? ハグ???」「どういうことやねん?」みたいに思ったのですが、実際に始まってみると、かなりいい感じでした(^-^)
まだ第一回しか終わっていませんが、今の時代の流れに即したものだと感じたからです。
そう。プリキュアが子どもが楽しむだけのものではありません! 大人こそ観るべきもの……
時代の流れを読み解くものなのです。
そんなわけで、今年のプリキュアの特徴と“時代の変化”を考えていきたいと思います!
時代の流れを読むために
僕はプリキュアが好きです。
3才の娘がいるので、一緒に見ています。
ですが、僕は漫然と「あー。楽しいなー」「プリキュア、可愛いなー」「変身したいなー」というだけで、プリキュアを見ているわけではありません。
“時代の流れを読むため”にプリキュアを見ています!
その証拠に、昨年の『キラキラ☆プリキュアアラモード』に関しては、

↑こんな記事を書かせていただき、プリキュアを大人が楽しむ秘訣や、時代を読み解くポイントを解説させていただきました。
ざっくり要点を書かせていただくと……
- 以前、プリキュアの元祖は肉弾戦だったのに、キラキラとかスイーツばかりでどうした?!
- でも、これは時代の流れを映している
- 元祖プリキュアの頃は、イラク戦争やオレオレ詐欺の多発など「強くないといけない」戦いの時代だった
- けれど、そこからイラク戦争は明確な解決を見ないまま終わり、リーマンショックに代表されるように経済にも大激変が起きた
- その後、社会は閉塞感を増し、多くの人が希望を失い、疲れを感じる時代になった
- 結果、その疲れを癒やすため、“甘さ”と“受容”をコンセプトとする『プリキュアアラモード』が誕生したのではないか?
という感じ。
もちろん、これが合っているかどうかはわかりません。どんな作品でも、受け止め方や解釈は人それぞれですから。
でも、「多くの人から人気を集めないと商売にならない」というTVアニメの性格上、時代や社会の流れを汲み取ったものであることは確かなのです。
だから、女の子アニメの代表格であるプリキュアは、今の時代を映すものであり、大人はそういう視点で観れば もっと楽しめる!と考えているのです。
未来へ向かって前進!
じゃあ、そういった視点で見た、今年の『HUGっと!プリキュア』はどんなものなのか?
一言で言うと、「現状から一歩を踏み出すため」の作品です。
そして、そこから「自分の手で未来を切り拓くため」に続いていくと考えています。
肉弾戦が復活!?
今回、一番驚いたのは、肉弾戦が復活したことでした。
いえ、まだスタートしたばかりなので確かではないですが、「あ! 素手で戦ってる!!」というシーンがあったのです。
また、今作の主人公キュアエールは、前作『プリキュアアラモード』の最終回にもチラリと登場していて、そこでもパンチやキックで戦う描写がされていました。
これは前作と比較すると、驚くべき変化です。
昨年の『プリキュアアラモード』では、プリキュアたちが自らの肉体を使って直接攻撃することはほとんどなく、手にしたアイテムからエネルギーを放つことで戦っていました。
いわば、魔法のようなもので、間接的に戦っていたわけです。
ですから、敵に対してパンチやキックをしたり、ましてや相手の攻撃を素手で受け止めることは、ほとんど見られませんでした。
ですが、『HUGっと!プリキュア』の第一回では、敵が繰り出してきた攻撃を、キュアエールが そのまま素手で受け止める描写がされていたのです。
「なんと! 元祖プリキュアの肉弾戦、復活?!」と思ってしまったのでした。
“未来”がテーマ
そして、もう一つ大きなポイントは、“未来”というテーマが貫かれていることです。
プリキュアに変身するキーになるアイテムが「ミライクリスタル」であったり、この世界でのプラスのエネルギーのことを「アスパワワ」(=明日の力)と呼んだり、“未来”や“明日”というキーワードがそこかしこに散りばめられています。
一方、敵である怪物たちの名前は「オシマイダー」(=お終いだ……)。その怪物たちを操る組織が「クライアス社」(=暗い明日)となっており、“希望の未来”や“輝ける明日”とは真逆の設定です。
しかも、その「クライアス社」は、どうやら完全なるタテ組織であり、厳格なルールのもとで動いている模様。何をするにも「稟議(りんぎ)」によって上司の承認を得ねばならず、一人一人の希望や個性が抑えつけられているようなのです。
つまり、そういった閉塞した組織を打ち倒し、「自らの希望の未来へ向かおう!」というのが、『HUGっと!プリキュア』に込められたメッセージと言えるでしょう。
しかも、先ほどの「素手で戦う」ということと合わせると、「自らの手で未来を切り拓く」という、かなり力強いメッセージが読み取れるのです。
男性性と女性性の両立
こういった視点で見ると、『HUGっと!プリキュア』は、その「ハグ」という名前に似合わず、かなり男性性の強い作品とも言えます。
あ。ここで言う“男性性”とは、「男の子向け」とか「男っぽい」ということではなく、
- 何らかの目標に向かって進む
- 自らの手で力強く前進する
といった目標達成的な思考や力強く前向きな姿勢を表すものです。
もともと、初代プリキュアは この“男性性”が強く、今までの少女アニメには無かったため、画期的で多くのファンを獲得しました。
それが近年は廃れたように見えたのですが、今回の『HUGっと!』で復活したのです。
赤ちゃんを守り育てる
ですが、男性性に振り切ったのかというと、そうではありません。
男性性の反対……いわば女性性も、今作ではきっちり備えられています。
それは、タイトルにも「HUG(ハグ)」とあるとおり、何かを「抱きしめること」「受容すること」「育むこと」が、作品の重要な要素となっているからです。
その代表となるのが、不思議な赤ちゃん「はぐたん」の存在。
最初は「赤ちゃん?!」「どういうこと??」となったのですが、先ほどの“未来”というテーマを踏まえると納得ですよね。
赤ちゃんというのは、無限の未来の可能性を持った存在ですから。
そして、赤ちゃんを育てるためには、
- 抱きしめること(=ハグ)
- 受容すること
- 癒やすこと
- 育むこと
といった女性性の要素が必要になります。
つまり、未来の可能性を開くためには、女性性も必要になるということなのです。
この「はぐたん」という存在が、物語の中でどういった役割を果たすのかはわかりませんが、“未来”というテーマで考えれば重要なキャラクターというのは明らかです。
「赤ちゃんを守り育てる」という女性性が、物語を進めるカギと言えるでしょう。
前作を踏まえた流れ
つまり、今までの話をまとめると、2018年の『HUGっと!プリキュア』は、男性性と女性性とが融合した作品ということになります。
このことに気づいたとき、僕は大きな感動を覚えました。なぜなら、昨年の『プリキュアアラモード』の流れをきっちりと踏まえたものだから。
女性性に振り切った昨年
昨年の『プリキュアアラモード』は女性性に振り切った作品でした。
さっきお伝えしたとおり、肉弾戦がほとんどありませんでしたし、変身や武器や必殺技もスイーツ(=お菓子)をアレンジしたもの。
いわば、物理的にも精神的にも“甘い”ものであったのです。
個人的には、「疲れた現代人を“癒やす”ための作品だった」と捉えています。
そんな“甘さ”や“癒やし”が貫かれていたため、「何らかの目標に向かう」とか「自らの手で切り拓く」といった男性性の要素はありませんでした。ただただ、現在の自分を見つめ直したり、自己を肯定することに終始していたのです。
悪い言い方をすれば、“前進のない”作品ということになります。
自分の“個性”を見つける
ですが、『プリキュアアラモード』は駄作だったかというと、全くそうではありません。
むしろ、今から振り返ると、素晴らしい作品だったと思います。
なぜなら、いったん女性性に振り切り、現状や自己を肯定することにより、自分の個性を見つめ直すことができたからです。
昨年のプリキュアでは、
- あなたの好きなことは何?
- 何があっても、自分の好きなことを大切にしよう!
- 好きなことを貫いて、個性を発揮しよう!!
ということが、再三に渡って表現されていました。
“大好き”がマストアイテム!
オープニングテーマの一節に
“大好き”が 一番のマストアイテム
『SHINE!! キラキラ☆プリキュアアラモード』歌詞より引用
とあるように、人それぞれの“大好き”という気持ちを見つめ直して、それを大切にすることが、昨年のテーマだったわけです。
ただ、『プリキュアアラモード』では、その“大好き”や自分の個性を見つめ直すことに留まり、そこから更に前へ進むというステップまでは行きませんでした。
具体的な変化を世界に起こしたわけではなく、「みんなが個性を大切にできる世界がいいよね」というレベルで終わったのです。
ですが、だからこそ、今年の『HUGっと!プリキュア』が、大きな意味を持つことになります。
個性がわかるからこそ前へ進める!
先ほどお伝えしたように、今年のプリキュアには、「自らの手で未来を切り拓く」というメッセージがあるように思います。
ですが、自分の望む未来へ進むためには、
- 自分の大好きなことが何なのか?
- 自分の個性ってどんなものなのか?
- 自分は何を目指しているのか?
が明確になっている必要があります。
そう。つまり、昨年の『プリキュアアラモード』のテーマをクリアしていないと、今作の『HUGっと!プリキュア』は意味をなさないのです。
もっと言えば、
- 昨年までは、自分自身を癒やし、個性を見つめ直す時代だった
- 今年からは、それを踏まえた上で実際に動き出すタイミング
ということになります。
つまり、昨年のプリキュアを踏まえることで、より一層 時代の流れを感じ取れるようになるのです。
もちろん初めてでも楽しめる!
とはいえ、ストーリーとしては完全に分断されているので、昨年のプリキュアを見ていないからといって、今年の『HUGっと!プリキュア』が楽しめないというわけではありません。
いえ。沢山の新しい要素が加わっているので、プリキュアが初めての人でも楽しめると思います!
ただ、昨年の『プリキュアアラモード』を見て、しっかりとテーマを受け取っていた人からすれば、『HUGっと!プリキュア』はかなり価値の高い作品になるだろう、と言えるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
まだ第一話した終わっていないので、不確かな部分も多いのですが、現時点で読み取れたことを元に、『HUGっと!プリキュア』の楽しみ方を書いてきました。
もう一度整理すると……
- 「自分の手で未来を切り拓く」という力強いテーマ
- 昨年までは廃れていた肉弾戦が復活?!(=男性性が強い作品)
- だが、「赤ちゃんを育てる」「未来を抱きしめる」という女性性も強い
- つまり、男性性と女性性が融合した作品ということ
- さらに、昨年のプリキュアのテーマだった「大好き」や「個性」があることで、もっと楽しむことができる
- 昨年は個性を見つめ直す時期だったが、今年は実際に動き出すタイミング!
ということになります。
たかがプリキュア。されどプリキュア。
「子どもの見るものだからー」と甘く見ずに、こんな風に“時代を読み解く材料”としていただくと、大人でもプリキュアをたくさん楽しめると思います!
そしてもしかしたら、自分たちの未来をも切り拓けるかもしれないのです。
そんなわけで、これから一年、一緒にプリキュアを楽しみましょう〜〜〜♪

↑現在、エンディングダンスの練習中