大学の卒業後、就職に失敗した僕は、引きこもりのニートになりました。
けれど、「このままではいけない」と思い、バイトを始めようとしました。
でも、研修を終えて、いざお客様の前で仕事を始めるとなったとき、めちゃくちゃ怖くなってしまいました。
だから、僕は その時の上司に言ったのです。
「すみません。自信が無いです」
「僕にはできません」
……と。
あまりの恐怖で、涙が出てしまうほどでした。
上司の前にも関わらず、子どものように泣きました。
人から見れば、ぜんぜん大したことではないかもしれない。たかがバイトなのだから、とりあえずやってみたらいい。
けれど当時の僕には、人と接することも、社会で働くことも、怖くて怖くてたまらなかったのです。
そして、そうやって恐怖している自分が、情けなくて情けなくてたまりませんでした。
だから、僕は思いました。
「そうだ。このまま辞めればいいんだ」
「こんな弱い僕は、誰の役にも立てない」
「仕事をしても、迷惑をかけるだけだ」
「だから、また引きこもりの生活に戻ればいい」
「それがきっと、僕に合った人生なんだ」
……と。
でも、泣きじゃくる僕を見ていた上司は、静かに告げました。
「泉林くん。少し、いいかい?」
「?」
「できるかできないかじゃないよ。やるかやらないかだ」
「!?」
その言葉を聞いて、僕はハッとしました。
ビックリしながら顔を上げると、上司は続けます。
「君が出来るかどうかなんて、オレにはわからない。
だって、まだ何も始まっていないんだから」
「もしかしたら、最初は上手くいかないかもしれない。
もしかしたら、君には向いていない仕事かもしれない。
けど、やってみたら、できるようになるかもしれない」
「というか、始める前に“できない”と決めてしまったら、何もできないよ」
「だから、オレは思うんだ。
“できるかできないか”じゃなく、“やるかやらないか”だ、って」
「君が自分のことを“できない”って言う理由は、オレにはよくわからない。
けど、まずはやってみたらいいんじゃないかな?」
そんな風に言ってくれたのです。
“できるかできないか”ではなく、“やるかやらないか”
その短い一言に、僕は衝撃を受けました。
「どうして、自分で“できない”と決めていたんだろう?」
「どうして、何も始まってないのに怖がっているのだろう?」
「たしかに働くのは怖いし、ツライこともあるかもしれない。
人と接するのは苦手だし、いっぱい傷つくかもしれない」
「けど、ここで動かなかったら、ずっと“できない自分”のままじゃないか……」
「このままでいいのか? 僕はずっと弱いままでいたいの?」
そうやって、自分に問いかけました。
答えは「NO」でした。
そんな僕の心を見てとったのか、上司は最後に問いました。
「どうする? 仕事、する?」
「やります」
僕は答えました。
それは僕にとって、大きな大きな一歩でした。
世間的に見れば、「バイトを始める」なんて小さな一歩かもしれない。
けれど、自信を無くして、人生をあきらめて、家に引きこもっていた僕にとっては、とてつもなく大きな一歩だったのです。
そこから僕は、引きこもりニートから脱して、少しずつ人と接して働くようになりました。
ぶっちゃけ、仕事は しんどかったです(^^;;
全然思うようにいかないし、時には怒られることもあるし、弱虫な僕はたくさん落ち込んで泣きました。
けど、着実に人生は変わっていきました。
そのバイトで一緒に働いていた女性と、お付き合いさせていただくようになりました。
働くことにも前向きになって、別の会社に就職することもできました。
そして、お付き合いしていた女性とは、3年の交際期間を経て、結婚することができました。
今では その人との間に、子どもを授かることもできています。

だから、振り返って思うんです。
あのとき上司の言葉がなくて、一歩前に踏み出せていなかったら、今ごろどうなっていただろう? と。
もしかしたら、ニートのままだったかもしれません。
もしかしたら、今でも家に引きこもっていたかもしれません。
もしかしたら、更に自信を失って、人に会わなくなっていたかもしれません。
少なくとも、妻と結婚することはできず、子どもも生まれていなかったことは確かです。
“できるかできないか”ではなく、“やるかやらないか”
この言葉が、僕の人生を変えてくれました。
だから、僕は思うんです。
「人生を変える」とか「望み通りに生きる」とか、世の中には沢山の情報が溢れているけれど、本当は こういった少しの違いなのではないか、と。
僕の人生にとっては、「バイトを始めるかどうか」という ほんの一歩の違いが、とてつもなく大きな変化を生み出しました。
そして、その一歩を踏み出すきっかけは、上司の短い一言でした。
だから、
- いま目の前にある日常を丁寧に見つめて
- いま目の前にいる人の言葉を真摯に受け止める
それが とてもとても大切なことなんじゃないか、と。
きっと、人生を変える秘訣や幸せになる秘密って、どこか遠くにあるものではないんです。
何かの本に書かれていたり、偉い人の言葉のなかにも無いと思います。
もちろん、本には有益な情報が沢山あるし、偉い人や有名な人の言葉は胸を打ちます。けど、それらはあくまでも“ヒント”であって、本当に自分の人生を変えてくれるものではない。
本当に本当に大切なことは、いま目の前にある日常や、いま目の前にいる人との関係の中にある
僕はそう思います。
ぶっちゃけ、そのバイトの上司は、どこにでもいるような普通の人でした。
けれど、引きこもりだった僕にとっては、宝物のような言葉をくれました。
だから、恩師であり、英雄(ヒーロー)とも言える存在です。
そんな風に、自分の人生で出会う人たちは、誰しもが恩師であり英雄です。
また逆に、自分も誰かにとっての恩師や英雄になれるんです。
そうやって、目の前の日常や身近な人との対話から大切なものを見つけ出せたとき、本当に自分の人生を変えていくことができると思います。
僕にとっては、「“できるかできないか”じゃなくて、“やるかやらないか”」が、人生を大きく変えてくれた言葉でした。
けれど、この言葉が誰の役にも立てるとは思っていません。
あなたの人生を変えるには、あなたのためだけの言葉やきっかけがあるはずなんです。
だから、その言葉やきっかけを、あなた自身の日常の中から見つけて欲しいと思います。
その一つの“ヒント”になればと思って、この記事を書きました。
そして もし、昔の僕のように「自分には出来ない」「自分は自信がない」と思う人がいるのなら、
- “できるかできない”じゃなくて、“やるかやらないか”です
- やってみないと、できるかどうかもわからないです
- だから、まずやってみるのがいいと思います
ということを、お伝えできたら幸いです。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!